看護師の客観的な観察と患者さんの主観的体験で効果・副作用を確認します
睡眠薬を服用した効果を観察します。まとまった睡眠時間がとれ、中途覚醒や早朝覚醒がなく、熟睡感が得られていることが理想です。
視診により顔貌・表情、姿勢・体位、体動、呼吸状態といった客観的な観察による判断だけではなく、翌朝、「昨夜は眠れましたか?」と声をかけ、患者さんが主観的にどう判断しているのか、さらに寝つき、途中での覚醒、目覚め、熟睡感、薬の飲み心地について尋ねてみます。
身体疾患や将来への不安などによる精神生理性不眠の患者さんの場合、看護師が客観的に「良民している」と判断しても、患者さん自身は起床後に「眠れなかった」と訴えることは少なくありません。
このように言われた場合、「巡回時にはしっかり眠っていましたので、大丈夫ですよ」と最初から否定したくなることもありますが、患者さんがそう感じているという心理的事実を受け止め、「そうですか、眠れないのはつらいですよね」などと共感を示す必要があります。
その後に、客観的には眠れていたように見えたことを丁寧に説明し、安心感を持たせるようにします。客観的にも自覚的にも眠れていないようであれば、担当の医師にその旨を報告します。
なかには、睡眠薬への知識不足や思い込みにより、過剰な不安を抱きながら服用している患者さんもいるかもしれません。現在の睡眠薬は、正しく服用すれば安全性が高いことを十分に説明します。
副作用としては、服用後に健忘がみられないか、睡眠中の呼吸状態はどうか、ふらつきや転倒はないか、せん妄を引き起こしていないか、肝障害を起こしていないかなどを観察します。
高齢者は代謝機能の低下により薬物の血中濃度が上昇しやすく、一方で身体機能が低下しているため、作用・副作用ともに強く出る傾向があります。また、ベンゾジアセピン系の薬物は、せん妄の原因にもなるため注意します。不眠のように見えても意識障害やせん妄の場合もあるため、不眠の背景を探る姿勢は、安全対策としても重要です。
急に睡眠薬を中止すると服用前よりも不眠が強く出現する場合があり(反跳性不眠)、作用時間の短い睡眠薬に起こりやすいといわれています。これを防ぐには、漫然と睡眠薬を使用しないことが重要で、十分か効果が得られた後は徐々に減らしていきます。
患者が長期的に服用していた睡眠薬を急に中断せざるを得ない場合や、入院中に継続して睡眠薬を使用していた患者さんが退院する場合などでは注意が必要です。
転倒防止のための対策:リスクの高い夜間のトイレに要注意
睡眠薬の使用だけでなく、不眠そのものも転倒のリスク要因となります。夜間に目が覚めればとりあえずトイレに行く人は多いでしょうし、夜間に眠れないと日中にぼんやりして転倒してしまうこともあります。つまり、睡眠障害の改善が何よりの転倒予防といえます。
気をつけたいのは排泄行動に伴う転倒です。対策としては、夜間は、室内やトイレまでの照明を足元が見える程度に明るくしておきます。履き物は底が滑りにくく、患者さんにとって履きやすいものを選びます。
初めてベッドで寝る患者さんや、点滴台やドレーン類などがある患者さんなどは、適切な環境整備のあり方や対策は個々によって異なります。患者さんや家族から「家での夜間の排泄はどうしていたか」を具体的に聞いておくと、ヒントが得られるかもしれません。ベッドからトイレに行き、排泄をして、ベッドに戻るまでの動作や環境を予め確認しておき、安全な移動方法を一緒に検討すると、患者さんの意識向上にもつながります。
また、排泄パターンに沿った対応を行うことも大切です。頻尿であれば夕方から水分摂取を控えるように促し、点滴をしている場合には夜間の補液量を減らす工夫ができる開始と検討します。患者さんの排泄パターンを観察し、睡眠薬の作用時間との兼ね合いを考慮したうえでトイレ誘導の時間を決めたり、あるいは看護師が付き添う必要があれば、必ずナースコールを押してほしいと伝えます。