不眠症状のパターンと使用される睡眠薬

不眠症は4つのパターンに分類され、その原因にかかわらず、幅広く処方される薬剤が以下に挙げるの睡眠薬です。なお、呼吸・循環系の抑制作用が強い「バルビツール酸系」の睡眠薬は、現在ではほとんど使用されることがなくなったため、ここでは省略させていただきます。

副作用にも注意
不眠のパターン どんな状態? どう対応する?
入眠障害 眠ろうとしても実際に眠りにつくまで時間がかかる 超短時間型・短時間型の睡眠薬(マイスリー、デパスなど)を使用する
中途覚醒 一度寝ついた後も朝までの間に途中で何回も覚醒し、再び寝つくことが困難なことを繰り返す 中間型・長時間型の睡眠薬(サイレース、ドラールなど)を使用する
早朝覚醒 十分な睡眠がとれていないのに、朝早く目が覚めてしまい、その後、眠れない状態。高齢者に多い 同上
熟眠障害 十分な睡眠時間がとれているにもかかわらず、睡眠が浅く、ぐっすり眠った感じがしないと訴える 客観的には眠れているように見えたことを伝え、安心感を持ってもらえるようにする。

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴と使用時の注意点

種類 一般名 商品名 半減期(時間)
超短時間型 ゾルピデム酒石酸塩錠
トリアゾラム錠
ゾピクロン製剤
マイスリー
ハルシオン
アモバン
2
2-4
4
短時間型 エチゾラム錠
ブロチゾラム製剤
リルマゾホン塩酸円塩水和物錠
ロルメタゼパム錠
デパス
レンドルミン
リスミー
エバミール
6
7
10
10
中間型 ニメタゼパム錠
フルニトラゼパム製剤
エスタゾラム錠
ニトラゼパム製剤
エリミン
サイレース
ユーロジン
ベンザリン
21
24
24
28
長時間型 フルラゼパム塩酸塩製剤
ハロキサゼラム製剤
クアゼパム錠
ダルメート
ソメリン
ドラール
65
85
36

現在は昔の薬剤より安全性が高い、ベンゾジアゼピン受容体に作用する薬剤の使用頻度が高くなっています。このタイプは、脳内の抑制性の神経伝達物質のGABAの作用を強化する働きがあり、抗不安作用、催眠作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用などを示します。そのため、睡眠薬として使用されるほか、抗不安薬や抗てんかん薬としても使用されることがあります。

通常、入眠障害型の不眠には、超短時間型・短時間型が使用され、中途覚醒や早朝覚醒の不眠には、中間型・長時間型が使用されます。不眠の原因として最も多い精神生理性不眠には超短時間型・短時間型で十分です。

これに対し、気分障害や統合失調症などの重い精神障害に伴う不眠には、中間型・長時間型の睡眠薬が必要になります。うつ病の睡眠障害には、眠気を起こす作用の強い、トラゾドンという抗うつ薬を使用することも行われます。

しかし、統合失調症にベンゾジアゼピン系睡眠薬が大量に投与されると、意識がややくもった状態になりながらも、入眠にまでは至らず、むしろ抑制がとれて興奮を起こすような場合があります。そこで統合失調症に伴う不眠には、非定型抗精神病薬のなかでも特に眠気や鎮静作用の強いクエチアピンを眠前に投与することがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、バルビツール酸系のような深刻な副作用はなく、比較的、安全な薬剤ですが、それでも注意すべき点がないわけではありません。まず、超短時間型・短時間型の副作用として、健忘が生じることがあります。また、服用中止後に反跳性不眠(服用以前よりも不眠の度合いが強くなってしまう状態)が出現することもあります。中間型・長時間型の副作用としては、翌日の倦怠感、筋弛緩作用によるふらつき、眠気などの持ち越しがあります。

高齢者では若年者よりも血中濃度が長期にわたって増加しやすくなり、そのため副作用が強く出て転倒などの事故がおきやすくなります。ベンゾジアゼピン受容体にはオメガ1とオメガ2の2種類のサブタイプがあり、オメガ1受容体は睡眠鎮静作用を生じ、オメガ2受容体は抗不安作用と筋弛緩作用を生じるとされています。

ゾピクロン、ゾルピデム、クアゼパムはオメガ1受容体に選択性があり、筋弛緩作用の少ない睡眠薬とされています。高齢者には、副作用の少ない短時間型のゾピクロンあるいはゾルピデムが勧めれてます。また、ロルメタゼパムは肝臓での代謝を受けずに体外に排出されるので、高齢者や肝臓疾患の患者さんにも使用しやすいとされています。

ベンゾジアゼピンは、呼吸抑制作用があるので、呼吸機能低下状態には禁忌となっています。また、急性狭隅角緑内障(エスタゾラムは除く)、重症筋無力症にも禁忌です。

抗ヒスタミン系、メラトニン受容体刺激薬

種類 一般名 商品名 半減期(時間)
抗ヒスタミン系 ヒドロキシジンパモ塩酸カプセル アタラックス 7-20
メラトニン受容体刺激薬 ラメルテオン錠 ロゼレム 1-2

抗ヒスタミン系のヒドロキシジン(アタラックス)は、身体疾患に伴う不眠の患者さんにも比較的副作用が少ないので使用しやすく、点滴で使用されます。最近、商品化されたメラトニン受容体刺激薬(ロゼレム)も副作用が少ないので、今後、使用機会が増えることが考えられます。