夜勤前に患者(高齢者)の状態を把握し、転倒リスクを見極めることが重要

高齢者人口の急速な増大に比例して、一般病院でも入院患者に占める高齢者の割合はますます高くなっています。外科および内科の急性期病棟では、治療・処置の管理や観察とともに、高齢者の特徴を踏まえた看護援助が必要になっています。

多くの患者が不眠を意識しています

高齢者の多い病棟での夜勤で看護師が特に気をつけたいポイントとしては、@睡眠状態の観察、A転倒・転落事故の防止が挙げられます。

睡眠状態の観察
入院直後は、自分の病室がどこだったかを失念したり、ナースコールの押し方がわからない場合も少なくありません。時には自分がなぜ病院にいるのかさえ忘れてしまっていることもあります。そのため巡回時には、睡眠状況と覚醒時の様子を観察し、覚醒の理由の確認と再入眠への援助を行います。

また、ベッド不在時は、徘徊していることもあるため、所在の確認が必要です。患者の所在確認ができない場合には、速やかに先輩看護師に報告し、状況によっては、他病棟に確認したり、管理婦長に報告数必要があります。

高齢者の20〜50%が不眠を意識しているといわれ、その頻度は年齢とともに増加します。また頻尿、尿失禁の頻度は加齢とともに増加し、高齢者の60%は夜間頻尿(2回以上)を訴え、5%は尿失禁などの経験があります。加齢に伴う生理的な現象からも睡眠パターンが乱れやすい状態となっているのです。

それに加えて高齢者は、基本的日常生活動作(ADL)や認知機能などの日常生活に関連した機能が低下しています。すなわち慣れない環境では適応能力も低下しており、入院によるストレスとともに、本来の睡眠パターンが障害されると容易に夜間せん妄に陥ります。

つまり、睡眠状態を巡回時に綿密に観察し、個人の睡眠パターンに近づけることで、入院生活への適応を高められるといえます。

転倒・転落の防止
高齢者における転倒発生の時間帯は、入院中の場合、準夜や深夜に多く発生し、施設内では5〜8時、18〜22時までに多い傾向にあります。骨粗鬆症を伴っている場合も多く、転倒・転落により骨折や硬膜下血腫が起こることもあり、注意が必要です。

夜勤巡回前に患者の状態を把握し、転倒のリスクが高いかどうかを判断します。すなわち、夜間排尿動作、睡眠状態、睡眠薬・向精神薬内服の有無、視力などです。そして、リスクが高い患者ほど安全対策をしっかり行います。

1.夜間の排尿パターンは個人差があり、昼間と違って夜間帯は排尿動作が安定しない場合もあります。患者の排尿パターンを把握し、必要に応じて排尿誘導なども行うようにします。

2.認知機能が低下してナースコールそのものが理解できない患者の場合は、離床センサーを設置し、立位になろうとした時点で看護師が駆けつけ、排尿などの援助を行えるようにします。

3.身体機能が低下している場合は、ベッドの高さやポータブルトイレの位置、障害物の除去などの環境の整備を行います。

4.睡眠薬を内服をしている場合、ふらつきがみられることがあるので、排尿時にはナースコールを押すように説明をします。

患者の状態に応じた、以上のような安全対策が支障なく行われているか、巡回ごとに確認するようにします。