全国の医療機関で夜勤専従看護師のニーズが高まっています
全国的に深刻な看護師不足を解消するため、医療機関は「日勤のみ」「未就学児がいる場合は夜勤免除」「短時間勤務制度」など、働きやすい制度や環境をアピールして人材確保を図っています。
しかし、患者さんの安全を24時間通して守るため、看護師さんは日中の時間帯だけでなく、夜間の仕事も求められます。働きやすい勤務形態を導入して実際に回していくためには、誰かが医療機関の抱える夜勤ニーズを解決しなければなりません。
そこで注目が高まっているのが「夜勤専従」という働き方です。「体力的に大変でしょう?」とよく言われますが、規則で夜勤は月9回までに限定されていますし、連続勤務といっても、体が慣れると生活のリズムがとりやすいくらいです。独身の若いナースには特に人気の高い働き方です。
この働き方で一番良いのは、勤務の特性上、連休が多いということです。3〜5連休は当たり前ですので、小さなお子さんがいるご家庭では、1日中子供と一緒にいることができますし、学業との両立を目指している方にも、通常の勤務形態よりも仕事と勉強のメリハリがつけやすいと評判です。
夜勤1回あたりの給与は、施設や病棟のタイプによって差がありますが、30,000円〜35,000円がだいたいの相場となっています。夜勤専従の雇用形態としては、以前は「非常勤」が大半でしたが、患者さんの状態を継続的に把握しやすい「常勤」という形で募集を行う施設も多くなってきました。常勤であれば、賞与や福利厚生の面でも通常のスタッフと同様の待遇を受けられます。
この働き方のデメリットとしては、患者さんとの直接的な触れ合いが少ないため、看護師としてのモチベーションを維持しにくいということでしょうか。それと、施設によってはスタッフが少ない年末年始の出勤を求められることもあります。
また、日勤の状況と比較すると、夜勤帯は看護師の人数が限られていますし、医師も当直体制のため常駐ではなくなります。以前の勤務先と施設の種類や病棟が異なる場合、夜勤帯の看護活動を把握するまでには、急変時の対応、重傷者の看護、死亡時の対応や、転倒、不穏など、予期せぬアクシデントへの不安がついてまわることと思います。
これらのいずれの場合も、夜勤巡回時の観察が基本となり、そのうえで特定状況を正確に認知し、対応していく能力が必要となります。施設や病棟によって、夜間の業務内容には差がありますが、皆さんが自信を持って夜勤に臨んでもらえるように、病棟別の観察ポイントや生活リズムを崩さないためのアドバイスなども紹介していきます。
夜勤帯のバイタルサインおよび一般状態の観察で注意すべき点
一般的に準夜勤帯には、夕食後にバイタルサインと一般状態の観察を行いますが、深夜では、定刻に懐中電灯を持って巡回しながら行います。
血圧は、状況に応じて、申し送りの内容から患者さんを選定し、測定します。例えば、術後当日の患者さんやその他の理由で循環動態の変調が予測される場合は、必要に応じて随時測定を行います。申し送りにより一般状態が安定している場合は、夜間睡眠中の測定は控えます。
脈拍も血圧と同様、状況に応じて患者さんの制定を行い、脈拍数・リズム・緊張度を観察します。脈拍の測定は、夜勤帯でもあっても、撓骨(とうこつ)動脈の触知が最も確実な方法です。
呼吸の観察に際しては、胸郭の動き・回数・リズムを確認するのが一般的です。観察しづらい場合は、患者さんの鼻腔に手を当てて呼吸の以上の有無を確認します。特に病的肥満がある患者さんの場合、呼吸停止を突然起こすリスクが低くないので、舌根沈下によるいびきには注意します。
また、夜間で呼吸状態を観察しづらい場合は、懐中電灯を胸部に当てると胸郭の動きが確認できます。この場合、光を患者さんの顔に当てないように注意します。人工呼吸装着時は、作動はもとより、ファイティングを起こしていないかどうかなど、胸郭の動きの観察は重要になります。
体温も状況に応じて患者さんを選定し、測定を行います。日勤帯から発熱している患者さんや術後の患者さんは定期的に観察し、必要に応じて温罨法・冷罨法を行います。
一般状態については、申し送りによる情報をもとに、患者さんに必要な内容を継続して観察します。持続点滴を行っている場合、注入量・速度の観察はもとより睡眠中は体動により接続部が外れやすく、輸液の漏れや血液の逆流があっても布団で隠れていたり、暗かったりすることにより発見が遅れる危険性があります。
このように、夜勤帯においては、一般状態やライン類・チューブ類ともに観察しづらい環境にあるため、看護師は特に注意して観察を行う必要があります。少しでも「あれ?」と思う場合や、「ひょっとして…!?」と判断に迷うような場合はリーダー看護師へ相談し、明らかに異常がある場合は必ず報告します。報告は、今すぐ報告しなければならない内容と、時間が経過してからでも問題のない内容かを判断し、判断に迷う場合は、早めに報告します。
睡眠の観察とナースコールへの対応
疾患からくる不安、仕事を休むことへの不安、その結果からくる経済的な不安など、入院している患者さんにとって不安の種類や程度は様々であり、これらが原因となって睡眠の変調をきたすことがあります。
また不安に加えて、入院による環境の変化、大部屋の他の患者さんのいびき等で睡眠に変調をきたすこともあります。さらに疼痛、体位、掻痒感、咳などの身体的原因により睡眠の変調をきたすこともあります。
睡眠不足は、患者さんの身体的・心理的な影響を及ぼし、自然治癒力の促進を妨げ、回復を遅らせる要因となります。したがって、患者さんの消耗を最小限にとどめ、回復過程に援助するためには良質な睡眠が確保されることが必要となります。
睡眠を阻害する要因の多くは夜勤帯に存在するため、申し送りにより患者さんの問題を把握し、快適な睡眠を得ることができるように、阻害因子の除去や軽減に努められるように観察していくことが重要です。
睡眠は呼吸状態との関連性が強く、快適な睡眠が取れていれば呼吸もリズミカルになります。不眠状態が続く場合には、睡眠薬が処方されます。処方された薬剤の用量・効果に加え、半減期の出現や副作用の観察も必要です。
夜勤帯では、患者さんにとって不安を助長する因子が増えるため、必ず枕元か、手の届くところにナースコールがあるかどうかを巡回時に確認します。上肢の動きが制限されている場合、センサー式のタイプや、カスタネットタイプで挟むとナースコールの機能を持ち合わせたものもあるので、患者さんの状況に応じて、いつでもナースコールできる環境を整える必要があります。
夜間のコール対応は、他の患者さんの迷惑になるので、ベッドサイドで訴えを聞くことになります。患者さんは看護師が応答してくれたのかどうか、またどの程度待たされる課など状況が確認できない不安な心理状態に陥りやすいので、できるだけ速やかに患者さんの側で訴えを聞いて、看護師の目で客観的に観察することが重要です。
精神的な不安から頻繁にナースコールを鳴らすこともあるので、他の患者さんへの迷惑を考えて、次にいつ巡回するのかを伝えておき、安心させるとよいでしょう。
夜勤時はME機器使用中の観察も看護師の大切な仕事です
心電図モニタ、人工呼吸器、輸液ポンプ、観血式血圧モニタ、パルスオキシメータなどに代表されるME機器の保守点検は、日勤帯ならば、施設や病棟によっては看護師ではなく臨床工学技師が行っています。
しかし、夜勤帯では状況によって、看護師がこの役割を担います。その場合、外観・作動・機能・安全性の点検が観察のポイントとなります。
例えば、夜勤帯での輸液ポンプ使用中の観察ポイントとして看護師が留意すべき点は、@輸液の設定値と実測値を比較し、注入量と速度が指示通りかどうか、Aドロップ機能を有する機種では、滴下数を正確に感知しているか、B各種アラームが正常に作動するか…などのの確認を行うことです。
ME機器のの構造や作動原理は理解しておくことが望ましいでしょう。また、夜勤帯に故障しないとも限らないので、故障時の対応方法も把握しておきます。機器の点検に加えて、より重要となるのは患者さんのフィジカル・アセスメントです。
一般的に、ME機器を装着している患者さんの場合は、重症化術後の場合など生命の危機状況にあることが多く、それだけに重篤な状況に急変しやすく、一刻を争う処置を必要とする場合があります。各種モニタ上のデータ値の時間的な推移を観察し、患者の今後の変化を予測することは夜勤専従看護師にとって不可欠です。
機器類を装着しているときは、看護師が機器装置の目的を把握することはもとより、患者さんへの使用目的をどのように説明されているかについて確認することも大切です。また、機器を装着しているからといって過信せずに、看護師の目と手で直接観察することが大切です。
夜勤時に看護師が注意すべき事故への対策
看護業務における自己分析の報告によると、日勤帯に比べて、患者側の問題、看護師の問題ともにいずれも夜勤帯の場合が事故の発生率が高くなっています。
まず、夜勤帯に入る前に当日の重症・手術患者等はどうなっているか、あるいは自分に割り当てられた業務量や業務内容は自分の能力に見合っているかどうかを確認しておきます。また、所属病院の事故発生時の報告ルートを含めたマニュアルを今一度確認しておくことが大切です。
万が一、夜勤帯に事故が発生した場合、新人看護師は初めてのケースが多く動揺しやすい状態にあります。第一発見者の場合は側対応するのが理想ですが、自分の能力で対応しきれない状況であれば応援を呼びます。
新人ナースの場合、現在の自分の能力を把握しておくことが肝心です。自分で確実に判断できなかったり、聞いたり見たことがない指示が出されたりしたら、遠慮せずに先輩看護師へ相談しましょう。また、覚えた技術やケアに関しては、教わったとおりの基本動作を常に忠実に守ることが原則となります。忙しいときや業務が煩雑になっているときは、基本動作の徹底が疎かになることがあるので、そのような場合は一呼吸おいてから安全かつ確実に行うことが賢明です。
勤務中に初めての処置などに携わる場合には、先輩看護師に始めてである旨を伝えて、実際に患者さんに対して実施する前に先輩と一緒に確認することが重要です。